令和4年-問1 基礎法学 その他
Lv4
問題 更新:2023-11-20 18:43:43
次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。
ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ ア ]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ ア ]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[ イ ]として力をもつ[ ウ ]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[ エ ]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。
(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)
ア | イ | ウ | エ | ||
---|---|---|---|---|---|
1. | 少数意見 | 判決理由 | 主文 | 多数決 | |
2. | 合議 | 判例 | 多数意見 | 全員一致 | |
3. | 少数意見 | 判例 | 多数意見 | 全員一致 | |
4. | 合議 | 判決理由 | 主文 | 多数決 | |
5. | 少数意見 | 判例 | 主文 | 多数決 |
正解 3
解説
ア:少数意見、イ:判例、ウ:多数意見、エ:全員一致
空欄に補充した文章は以下のとおり。
ヨーロッパ大陸において、伝統的に[ア:少数意見]制に対して消極的な態度がとられていることは知られるが、これはそこでの裁判観につながると考えられる。それによれば、裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすることは、裁判所の権威を害するとされる。[ア:少数意見]制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退すると考えられているようである。裁判所内部にいかに意見の分裂があっても、[イ:判例]として力をもつ[ウ:多数意見]のみが一枚岩のように示されることが、裁判への信頼を生むとされるのであろう。しかし、果たして外観上つねに[エ:全員一致]の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。英米的な考え方からすると、各裁判官に自らの意見を独自に述べる機会を与える方が、外部からみても裁判官の独立を保障し、司法の威信を増すともいえよう。ここには、大陸的な裁判観と英米的な裁判観のちがいがあるように思われる。
(出典 伊藤正己「裁判官と学者の間」1993年から)
法学の知識を問う設問というより、法学が題材の文章問題である。
ア.少数意見
【ア】には「裁判官の意見が区々に分かれていること」に対応する語句が入るので、「合議」ではなく「少数意見」が妥当である。
イ.判例、ウ.多数意見
「少数意見制は、その先例としての力を弱めるのみではなく、裁判所全体の威信を減退する」という部分から、【イ】には先例との対応で「判例」、【ウ】には少数意見との対応で「多数意見」が入る。
エ.全員一致
「外観上つねに【エ】」という部分の外観は「一枚岩のように」が対応する。
一枚岩とは内部分裂や意見の違いなどなくまとまっていることなので、【エ】には「全員一致」が入る。