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令和4年-問10 行政法 行政総論

Lv3

問題 更新:2023-01-17 10:01:56

行政調査に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 警察官職務執行法には、警察官は、職務質問に付随して所持品検査を行うことができると規定されており、この場合には、挙動が異常であることに加えて、所持品を確認する緊急の必要性を要するとされている。
  2. 交通の取締を目的として、警察官が自動車の検問を行う場合には、任意の手段により、走行の外観上不審な車両に限ってこれを停止させることができる。
  3. 行政手続法においては、行政調査を行う場合、調査の適正な遂行に支障を及ぼすと認められない限り、調査の日時、場所、目的等の項目を事前に通知しなければならないとされている。
  4. 国税通則法には、同法による質問検査権が犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと定められていることから、当該調査において取得した資料をその後に犯則事件の証拠として利用することは認められない。
  5. 行政調査の実効性を確保するため、調査に応じなかった者に刑罰を科す場合、調査自体の根拠規定とは別に、刑罰を科すことにつき法律に明文の根拠規定を要する。
  解答&解説

正解 5

解説

警察官職務執行法には、警察官は、職務質問に付随して所持品検査を行うことができると規定されており、この場合には、挙動が異常であることに加えて、所持品を確認する緊急の必要性を要するとされている。 1.妥当でない

警察官は、職務質問に付随して所持品検査を行うことができるとは規定されていないので、妥当でない。

警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる(警察官職務執行法2条1項)。

なお、職務質問に付随した所持品検査について、判例は「職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、職務質問ないし所持品検査の目的、性格及びその作用等にかんがみると、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される場合があると解すべきである(最判昭和53年9月7日)」としている。

交通の取締を目的として、警察官が自動車の検問を行う場合には、任意の手段により、走行の外観上不審な車両に限ってこれを停止させることができる。 2.妥当でない

「走行の外観上不審な車両に限る」必要はない。

自動車検問において、走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく停止を求めることは、任意の協力を求める形で運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。

判例は、「警察法2条1項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといって無制限に許されるべきものでないことも同条2項及び警察官職務執行法1条などの趣旨にかんがみ明らかである。
しかしながら、自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況などをも考慮すると、警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである(最判昭和55年9月22日)」としている。

行政手続法においては、行政調査を行う場合、調査の適正な遂行に支障を及ぼすと認められない限り、調査の日時、場所、目的等の項目を事前に通知しなければならないとされている。 3.妥当でない

行政手続法は、行政調査に関しては定めていない。

(目的等)行政手続法1条
この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
規定されている 処分、行政指導、届出、命令
規定されていない 計画策定、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続、事後的な救済手続きなど
規定されている
処分、行政指導、届出、命令
規定されていない
計画策定、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続、事後的な救済手続きなど

国税通則法には、同法による質問検査権が犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと定められていることから、当該調査において取得した資料をその後に犯則事件の証拠として利用することは認められない。 4.妥当でない

国税通則法74条の8は「職員の質問検査権等や職員・国税局長の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と規定しているが、行政調査において取得した資料を犯則事件の証拠として利用することについて判例は「質問又は検査の権限の行使にあたって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである(最決平成16年1月20日)」としている。

行政調査の実効性を確保するため、調査に応じなかった者に刑罰を科す場合、調査自体の根拠規定とは別に、刑罰を科すことにつき法律に明文の根拠規定を要する。 5.妥当である

行政調査は、調査に応じる義務、強制力の有無や態様という観点から、次のように分類できる。

①法的拘束力の欠いた任意的な調査
 宗教法人への立入調査
 (宗教法人法78条の2第1項)
②応じる義務はあるが強制する仕組みのない調査
 警職法の立入調査
 (警職法6条2項)
③拒否すると対象から外れるなどの不利な仕組みがある調査
 生活保護対象者への立入調査
 (生活保護法28条4項)
④拒否すると罰則がある調査
 間接国税の検査拒否や妨害等
 (国税犯則取締法19条の2)
⑤実力行使して相手の抵抗を排してできる調査
 関税法の犯則事件調査の臨検等
 (関税法121条)

調査に応じなかった者に刑罰を科す場合は④に該当し、調査自体の根拠規定とは別に、刑罰を科すことにつき法律に明文の根拠規定を要する。

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