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令和4年-問36 商法 商法総則

Lv4

問題 更新:2024-01-05 15:32:34

営業譲渡に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、営業を譲渡した商人を甲、営業を譲り受けた商人を乙とし、甲および乙は小商人ではないものとする。

  1. 甲が営業とともにその商号を乙に譲渡する場合には、乙が商号の登記をしなければその効力は生じない。
  2. 乙が甲の商号を引き続き使用する場合には、乙は、甲の営業によって生じた債務を弁済する貢任を負う。ただし、営業譲渡後、遅滞なく、乙が第三者である丙に対して、甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知をした場合には、乙は、丙に対して弁済責任を負わない。
  3. 乙が甲の商号を引き続き使用する場合に、甲の営業によって生じた債権について、債務者である丙が乙に対して行った弁済は、丙の過失の有無を問わず、丙が善意であるときに、その効力を有する。
  4. 乙が甲の商号を引き続き使用しない場合において、乙が甲の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、甲の弁済責任が消滅するため、甲の債権者である丙は、乙に対して弁済の請求をしなければならない。
  5. 甲および乙が、乙に承継されない債務の債権者(残存債権者)である丙を害することを知りながら、無償で営業を譲渡した場合には、丙は、乙に対して、甲から承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。
  解答&解説

正解 5

解説

甲が営業とともにその商号を乙に譲渡する場合には、乙が商号の登記をしなければその効力は生じない。 1.誤り

「登記をしなければ効力は生じない」としている点が誤り。

商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することはできないが(商法15条2項)、当事者間においては、意思表示によって成立するため、合意があれば譲渡は有効である。

もっとも、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合にしか、商号譲渡はできない(商法15条1項)。

乙が甲の商号を引き続き使用する場合には、乙は、甲の営業によって生じた債務を弁済する貢任を負う。ただし、営業譲渡後、遅滞なく、乙が第三者である丙に対して、甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知をした場合には、乙は、丙に対して弁済責任を負わない。 2.誤り

乙が「第三者」丙に対してする「乙が甲の債務を弁済する責任を負わない旨の通知」は、譲受人「乙」と譲渡人「甲」が共にしなければならない。

譲渡人の商号を引き続き使用する場合には原則として譲受人にも債務弁済の責任が生じるが(商法17条1項)、遅滞なく譲渡人の債務責任を負わない旨の登記をした場合、または譲受人及び譲渡人から第三者に対しその旨の通知をした場合は免責される(商法17条2項)。

乙が甲の商号を引き続き使用する場合に、甲の営業によって生じた債権について、債務者である丙が乙に対して行った弁済は、丙の過失の有無を問わず、丙が善意であるときに、その効力を有する。 3.誤り

「過失の有無を問わず」としている点が誤り。
弁済を有効にするためには、丙が「善意無重過失」である必要がある。

譲渡人の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する(商法17条4項)。

乙が甲の商号を引き続き使用しない場合において、乙が甲の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、甲の弁済責任が消滅するため、甲の債権者である丙は、乙に対して弁済の請求をしなければならない。 4.誤り

「広告をしたときは、甲の弁済責任が消滅する」としている点が誤り。
この広告があった時点では丙は、甲、乙どちらに対しても請求できる。

甲乙の間では営業譲渡契約で債務の求償関係があるにせよ、広告から2年間は丙に対して連帯債務の関係に立つ。

譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をし、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合の譲渡人の責任は、この広告があった日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する(商法18条2項)。

甲および乙が、乙に承継されない債務の債権者(残存債権者)である丙を害することを知りながら、無償で営業を譲渡した場合には、丙は、乙に対して、甲から承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。 5.正しい

譲渡人が譲受人に承継されない債務の残存債権者を害することを知って営業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受人に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる(商法18条の2第1項)。

たとえば不採算部門を甲に残して甲の優良部門を乙が譲り受けた場合、丙の債権は回収が困難になると考えられる。
このような営業譲渡について丙を害すると知っていた場合には、丙は乙に対して譲り受けた優良部門の価額を限度として債務の履行を請求することができる。

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