令和4年-問41 多肢選択式 憲法
Lv4
問題 更新:2023-11-20 18:54:16
次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
[ ア ]の争訟は、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られるとする当審の判例(引用略)に照らし、地方議会議員に対する出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが、①②の要件を満たす以上、[ ア ]の争訟に当たることは明らかであると思われる。
[ ア ]の争訟については、憲法32条により国民に裁判を受ける権利が保障されており、また、[ ア ]の争訟について裁判を行うことは、憲法76条1項により司法権に課せられた義務であるから、本来、司法権を行使しないことは許されないはずであり、司法権に対する[ イ ]制約があるとして司法審査の対象外とするのは、かかる例外を正当化する[ ウ ]の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。
国会については、国権の最高機関(憲法41条)としての[ エ ]を憲法が尊重していることは明確であり、憲法自身が議員の資格争訟の裁判権を議院に付与し(憲法55条)、議員が議院で行った演説、討論又は表決についての院外での免責規定を設けている(憲法51条)。しかし、地方議会については、憲法55条や51条のような規定は設けられておらず、憲法は、[ エ ]の点において、国会と地方議会を同視していないことは明らかである。
(最大判令和2年11月25日民集74巻8号2229頁、宇賀克也裁判官補足意見)
- 法令上
- 一般的
- 公法上
- 地位
- 自律性
- 訴訟法上
- 外在的
- 必然的
- 公益上
- 法律上
- 独立性
- 社会的
- 慣習法上
- 権能
- 私法上
- 公共性
- 偶然的
- 実体法上
- 判例法上
- 憲法上
- ア
-
- イ
-
- ウ
-
- エ
-
正解
- ア10
- イ7
- ウ20
- エ5
解説
ア:10(法律上)、イ:7(外在的)、ウ:20(憲法上)、エ:5(自律性)
空欄に補充した文章は以下のとおり。
[ア:法律上]の争訟は、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られるとする当審の判例(引用略)に照らし、地方議会議員に対する出席停止の懲罰の取消しを求める訴えが、①②の要件を満たす以上、[ア:法律上]の争訟に当たることは明らかであると思われる。
[ア:法律上]の争訟については、憲法32条により国民に裁判を受ける権利が保障されており、また、[ア:法律上]の争訟について裁判を行うことは、憲法76条1項により司法権に課せられた義務であるから、本来、司法権を行使しないことは許されないはずであり、司法権に対する[イ:外在的]制約があるとして司法審査の対象外とするのは、かかる例外を正当化する[ウ:憲法上]の根拠がある場合に厳格に限定される必要がある。
国会については、国権の最高機関(憲法41条)としての[エ:自律性]を憲法が尊重していることは明確であり、憲法自身が議員の資格争訟の裁判権を議院に付与し(憲法55条)、議員が議院で行った演説、討論又は表決についての院外での免責規定を設けている(憲法51条)。しかし、地方議会については、憲法55条や51条のような規定は設けられておらず、憲法は、[エ:自律性]の点において、国会と地方議会を同視していないことは明らかである。
(最大判令和2年11月25日民集74巻8号2229頁、宇賀克也裁判官補足意見)
本問は地方議会による議員に対する出席停止処分取消等請求事件最高裁判決の宇賀克也裁判官補足意見である。
これまでの判例(地方議会議員出席停止事件:最大判昭和35年10月19日)では、地方議会議員の出席停止処分については、司法権の限界の1つである部分社会の法理により司法判断の対象とならないとされていたが、それが60年ぶりに変更され「普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となるというべきである」とされた。
ア.法律上
裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する(裁判所法3条1項)と規定しているが、この法律上の争訟について判例は、「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって」、かつ、「それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる」としている(最判昭和56年4月7日)。
以上により、空欄には「法律上」があてはまる。
イ.外在的
外在的制約とは、ここでいう司法審査の対象外とする根拠としての憲法の存在である。
法律上の争訟にあたるが、事柄の性質上として裁判所の審査に適しないと認められるものを「司法権の限界」という。
本来、事件性を充足する争訟については、裁判所は司法権を行使するべきであるが、憲法が明文で認めたもの、または憲法の解釈によって導かれる場合は例外とされ外部からの制約がある。
以上により、空欄には「外在的」があてはまる。
ウ.憲法上、エ.自律性
末段では地方議会と国会の違いを述べている。
・国会については憲法で議員資格の裁判権を付与している→自律権に属する行為で司法の審査権が及ばない。
・地方議会はこのような憲法規定がない→司法審査の対象外とする根拠がない。
という記述から前段に戻ると、地方議員の出席停止の懲罰の取消しを求める訴えについて司法審査の対象外とするためには肢イでも説明したように、憲法上の根拠がある場合に限られると読むことができる。