令和4年-問46 記述式 民法
Lv3
問題 更新:2023-01-30 11:37:07
Aは、工場を建設するために、Bから、Bが所有する甲土地(更地)を、賃貸借契約締結の日から賃借期間30年と定めて賃借した。ただし、甲土地の貸借権の登記は、現在に至るまでされていない。ところが、甲土地がBからAに引き渡される前に、甲土地に何らの権利も有しないCが、AおよびBに無断で、甲土地に塀を設置したため、Aは、甲土地に立ち入って工場の建設工事を開始することができなくなった。そこで、Aは、Bに対応を求めたが、Bは何らの対応もしないまま現在に至っている。Aが甲土地に工場の建設工事を開始するために、Aは、Cに対し、どのような請求をすることができるか。民法の規定および判例に照らし、40字程度で記述しなさい。
Aは、Cに対し、
正解例
例①
Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使し、塀の撤去及び損害賠償を請求することができる。(45字)
例②
Bの所有権に基づく妨害排除請求権の代位行使により、塀の撤去を請求することができる。(41字)
解説
賃借権を有するAがCに対して無断で設置した塀の撤去を求めるには、いくつかの方法がある。
まず、A自身の賃借権に基づく妨害排除請求権があるが(民法605条の4第1号)、605条の2第1項に規定する賃借権の登記などの対抗要件を備えていない。
次に、既にAが甲土地を占有していれば、占有権による請求ができるが、引き渡される前にCに塀を設置されているため、これも請求できない。
そのため、今回の条件であれば、A自身の賃借権ではなく、Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することとなる。
判例は、「建物の賃借人が、賃貸人たる建物所有者に代位して、建物の不法占拠者に対しその明渡を請求する場合には、直接自己に対して明渡をなすべきことを請求することができる」(最判昭和29年9月24日)としており、Bが何らの対応もしない場合、Aがその権利を代位行使できる。
また、所有者Bに損害が生じていた場合は、損害賠償請求を代位行使することができる。
したがって解答例が2つに分かれるが、どちらも正解となる。