令和5年-問2 基礎法学 その他
Lv2
問題 更新:2024-01-07 20:20:38
法人等に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。
ア.いわゆる「権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するが、法人格がないため、訴訟上の当事者能力は認められていない。
イ.法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である。
ウ.一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。
エ.公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいう。
オ.特定非営利活動法人(いわゆる「NPO法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいう。
- ア・ウ
- ア・エ
- イ・ウ
- イ・オ
- エ・オ
正解 5
解説
エとオが妥当である。
いわゆる「権利能力なき社団」は、実質的には社団法人と同様の実態を有するが、法人格がないため、訴訟上の当事者能力は認められていない。 ア.妥当でない
「権利能力なき社団」であっても、他の諸事情と併せ総合的に観察して「法人でない社団」として訴訟上の当事者能力が認められる場合がある。したがって妥当でない。
判例は、「民訴法29条にいう「法人でない社団」にあたるというためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していなければならない(最判昭和39年10月15日)」を踏襲しながら、「これらのうち、財産的側面についていえば、必ずしも固定資産ないし基本的財産を有することは不可欠の要件ではなく、そのような資産を有していなくても、団体として、内部的に運営され、対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され、かつ、その収支を管理する体制が備わっているなど、他の諸事情と併せ、総合的に観察して、同条にいう「法人でない社団」として当事者能力が認められる場合がある」としている(最判平成14年6月7日)。
法人は、営利法人と非営利法人に大別されるが、合名会社やそれと実質的に同様の実態を有する行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は非営利法人である。 イ.妥当でない
法人は、営利法人と非営利法人に大別される。
営利とは、構成員(株主など)の経済的利益を追求し、団体の利益を構成員に分配することである。非営利とは、経済的利益が発生しても構成員(社員など)に分配しないことである。
つまり、経済的利益を分配可能か否かで営利性は決まる。
行政書士法人、弁護士法人および司法書士法人は、構成員に対して、経済的利益を分配可能であるため、営利法人である。
なお、医療法人は、医療法54条により剰余金の配当をしてはならないと規定されているため非営利である。また、NPO法人についても特定非営利活動促進法2条2項1号により営利性が否定されている。
一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人であることから、一切の収益事業を行うことはできない。 ウ.妥当でない
一般社団法人および一般財団法人は、いずれも非営利法人と決められているわけではない。
法人設立時に営利型にするか非営利型にするかは、その法人の定款等次第であり、それにより営利、非営利が決まる。
仮に非営利型であったとしても、構成員に対して経済的利益を分配できないだけであり(肢イ解説を参照)、経済的利益の前提となる収益活動ができないということはない。
公益社団法人および公益財団法人とは、一般社団法人および一般財団法人のうち、学術、技芸、慈善その他の法令で定められた公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業を行うことを主たる目的とし、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)から公益認定を受けた法人をいう。 エ.妥当である
公益社団法人および公益財団法人とは以下のとおり(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律2条、4条)。
公益社団法人 | 行政庁の認定を受けた一般社団法人 |
---|---|
公益財団法人 | 行政庁の認定を受けた一般財団法人 |
公益法人 | 公益社団法人又は公益財団法人 |
公益目的事業 | 学術、技芸、慈善その他の公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの |
公益社団法人 | 行政庁の認定を受けた一般社団法人 |
---|---|
公益財団法人 | 行政庁の認定を受けた一般財団法人 |
公益法人 | 公益社団法人又は公益財団法人 |
公益目的事業 | 学術、技芸、慈善その他の公益に関する種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの |
特定非営利活動法人(いわゆる「NPO法人」)とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする保健、医療または福祉の増進その他の法令で定められた特定の活動を行うことを主たる目的とし、所轄庁(都道府県の知事または指定都市の長)の認証を受けて設立された法人をいう。 オ.妥当である
特定非営利活動法人(NPO法人)については、特定非営利活動促進法に規定されている。
「特定非営利活動」とは不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいい、「保健、医療または福祉の増進」が掲げられている。