令和5年-問5 憲法 総論
Lv3
問題 更新:2024-01-07 20:26:33
罷免・解職に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。
- 議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。
- 閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。
- 最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。
- 裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。
正解 3
解説
衆議院比例代表選出議員または参議院比例代表選出議員について、名簿を届け出た政党から、除名、離党その他の事由により当該議員が政党に所属する者でなくなった旨の届出がなされた場合、当該議員は当選を失う。 1.妥当でない
国会法には、当該議員が当選した選挙の同一比例ブロックで名簿を届け出ていた他の政党に移動した場合は、議員の地位を失う旨が定められているが(国会法109条の2)、除名や離党しただけでは議員の地位を失わない。
議員の資格争訟の裁判は、国権の最高機関である国会に認められた権能であるから、両院から選出された国会議員による裁判の結果、いずれかの議院の議員が議席を失った場合には、議席喪失の当否について司法審査は及ばない。 2.妥当でない
議員の資格の有無を問う争訟のことを議員の資格争訟といい、議員資格争訟裁判には司法審査が及ばない点は正しいが、「両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する(憲法55条)」とされているため、各議院が自ら行うものとした議院の権能である。
したがって、議員資格争訟裁判は国会の権能ではない。
閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされてきたので、これを前提にすれば、衆議院の解散の決定にあたり反対する大臣がいるような場合には、当該大臣を罷免して内閣としての意思決定を行うことになる。 3.妥当である
閣議による内閣の意思決定は、慣例上全員一致によるものとされている。これを前提にすれば、首相には国務大臣の任命権・罷免権があるため、首相は解散に反対する国務大臣を罷免して自らその職務を兼任することにより、閣議決定を成立させることができる。
最高裁判所の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民の審査に付されるが、その後、最高裁判所の長官に任命された場合は、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として改めて国民の審査に付される。 4.妥当でない
最高裁判所の長官に任命された場合に、任命後最初の衆議院議員総選挙の際に、長官として国民の審査に付されることはない。
最高裁判所の裁判官は任命された後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に国民審査を受け、この審査の日から10年を経過した後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に更に審査を受けることとされている(憲法79条2項、最高裁判所裁判官国民審査法2条)。
裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されず、また、著しい非行があった裁判官を懲戒免職するためには、最高裁判所裁判官会議の全員一致の議決が必要である。 5.妥当でない
裁判官は、公の弾劾によらなければ罷免されないが(憲法78条)、この弾劾裁判は最高裁判所裁判官会議によって行われるものではなく、国会に設けられた裁判官弾劾裁判所で行われ、この弾劾裁判所で審理を行うのは、国会議員から選ばれた裁判員である(裁判官弾劾法)。
また、裁判官の懲戒は、戒告又は1万円以下の過料とする旨が規定されており(裁判官分限法2条)、「著しい非行があった裁判官を懲戒免職」することはできない。