令和5年-問23 行政法 地方自治法
Lv4
問題 更新:2024-01-07 21:09:43
地方自治法(以下「法」という。)が定める直接請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、以下「選挙権」とは、「普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権」をいう。
- 事務監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば、日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず、これを請求することができる。
- 普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。
- 市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるとき、関係人は、法定の期間内に総務大臣にこれを申し出ることができる。
- 議会の解散請求は、日本国民たる普通地方公共団体の住民であって選挙権を有する者の総数のうち、法所定の数以上の連署をもって成立するが、この総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられている。
- 議会の解散請求が成立した後に行われる解散の住民投票において、過半数の同意があった場合、議会は解散するが、選挙権を有する者の総数が一定以上の普通地方公共団体については、過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている。
正解 4
解説
事務監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば、日本国民であるか否か、また選挙権を有するか否かにかかわらず、これを請求することができる。 1.誤り
外国人と選挙権を有しない者は請求できないので誤り。
事務監査請求するには、普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有することが要件となっており(地方自治法75条1項、地方自治法74条1項)、当該選挙権は、「日本国民たる」年齢満18年以上の者で引き続き3ヵ月以上市町村の区域内に住所を有することが必要である(地方自治法18条)。
なお、住民監査請求は、その要件が「普通地方公共団体の住民」であるため、外国人でも行うことが可能である。
普通地方公共団体の事務のうち法定受託事務に関する条例については、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることはできない。 2.誤り
法定受託事務に関する条例についても、条例の制定改廃の直接請求の対象とすることができるので誤り。
普通地方公共団体は、事務に関して条例を制定できるが、条例の制定については法定受託事務と自治事務は区別されていないため、普通地方公共団体の議会は法定受託事務についても条例を制定できる(地方自治法2条2項、地方自治法14条1項)。
選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の1/50以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃の請求をすることができる(地方自治法74条1項)。
市町村の条例の制定改廃の直接請求における署名簿の署名に関し異議があるとき、関係人は、法定の期間内に総務大臣にこれを申し出ることができる。 3.誤り
「総務大臣に」としている点が誤り。「当該市町村の選挙管理委員会」に申し出ることができる。
署名簿の署名に関し異議があるときは、関係人は、第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる(地方自治法74条の2第4項)。
条例の制定又は改廃の請求者の代表者は、条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めなければならず、当該市町村の選挙管理委員会は、その日から20日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならない(地方自治法74条の2第1項)。
当該市町村の選挙管理委員会は、署名簿の署名の証明が終了したときは、その日から7日間、その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない(地方自治法74条の2第2項)。
議会の解散請求は、日本国民たる普通地方公共団体の住民であって選挙権を有する者の総数のうち、法所定の数以上の連署をもって成立するが、この総数が一定数以上の普通地方公共団体については、成立要件を緩和する特例が設けられている。 4.正しい
選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の1/3(その総数が40万を超え80万以下の場合にあってはその40万を超える数に1/6を乗じて得た数と40万に1/3を乗じて得た数とを合算して得た数、その総数が80万を超える場合にあってはその80万を超える数に1/8を乗じて得た数と40万に1/6を乗じて得た数と40万に1/3を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができる(地方自治法76条1項)。
上記条文内のかっこ書き内が成立要件緩和の特例部分である。
議会の解散請求が成立した後に行われる解散の住民投票において、過半数の同意があった場合、議会は解散するが、選挙権を有する者の総数が一定以上の普通地方公共団体については、過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている。 5.誤り
「過半数の同意という成立要件を緩和する特例が設けられている」としている点が誤り。
選挙権を有する者は、政令の定める連署によって普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができ(地方自治法76条3項)、普通地方公共団体の議会は解散の投票において過半数の同意があったときは、解散する(地方自治法78条)。
しかし、選挙権を有する者の総数が一定以上の普通地方公共団体については、過半数の同意という成立要件を緩和する特例は設けられていない。
なお、解散請求の連署の総数については、地方自治法76条1項のかっこ書きに成立要件緩和の特例が設けられている。
成立要件の緩和は、要求段階である解散請求についてはあるが、実際に実施される解散の住民投票にはない。