令和5年-問41 多肢選択式 憲法
Lv4
問題 更新:2024-01-07 21:21:17
次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、[ ア ]の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ[ イ ]な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。
出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが[ ウ ]に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨(略)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら[ エ ]を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、・・・(中略)・・・例外的に事前差止めが許されるものというべきであ〔る〕(以下略)。
(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)
- 名誉毀損
- 公正な論評
- 公共の安全
- 私的自治
- 公務の遂行
- 公の批判
- 実質的
- 公益
- 営利
- 公正
- 出版者の収益
- 事実の摘示
- 公共の利害
- 国民の自己統治
- 公権力の行使
- 個別的
- 合理的
- 明確
- 著者の自己実現
- 公共の福祉
- ア
-
- イ
-
- ウ
-
- エ
-
正解
- ア6
- イ18
- ウ13
- エ8
解説
ア:6(公の批判)、イ:18(明確)、ウ:13(公共の利害)、エ:8(公益)
空欄に補充した文章は以下のとおり。
表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、[ア:公の批判]の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであって、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ[イ:明確]な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。
出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが[ウ:公共の利害]に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨(略)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら[エ:公益]を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、・・・(中略)・・・例外的に事前差止めが許されるものというべきであ〔る〕(以下略)。
(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)
北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日)においては、裁判所の出版物に対する事前差し止めは検閲にあたるのか、また事前差し止めが表現の自由を保障する憲法21条に違反するのではないかという点が論点になっている。
検閲とは、行政権によって、思想内容等の表現物を発表の禁止目的で網羅的一般的な発表前の審査をすることである。
一方、事前抑制とは、表現行為を公権力によって事前に何らかの方法で抑制することで、本問のような表現物の事前差止めの他、検閲(検閲の主体は行政権)も包含する概念とされる。
検閲との大きな違いは、検閲が絶対的禁止なのに対し事前抑制は原則禁止だが例外がある。すなわち、本問の判例にあるように司法権による、表現内容が真実ではなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあれば許される。
そして判例は、裁判所による事前差し止めの仮処分は憲法が禁止する検閲にあたらないとしている。