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令和5年-問42 多肢選択式 行政法

Lv2

問題 更新:2024-01-07 21:21:55

次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

公営住宅法は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を建設し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することにより、国民生活の安定と[ ア ]の増進に寄与することを目的とするものであって(1条)、この法律によって建設された公営住宅の使用関係については、管理に関する規定を設け、家賃の決定、明渡等について規定し(第3章)、また、法〔=公営住宅法〕の委任(25条)に基づいて制定された条例〔=東京都営住宅条例〕も、使用許可、使用申込、明渡等について具体的な定めをしているところである。右法及び条例の規定によれば、公営住宅の使用関係には、[ イ ]の利用関係として公法的な一面があることは否定しえないところであって、入居者の募集は公募の方法によるべきこと(法16条)などが定められており、また、特定の者が公営住宅に入居するためには、事業主体の長から使用許可を受けなければならない旨定められているのであるが(条例3条)、他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋[ ウ ]と異なるところはなく、このことは、法が賃貸(1条、2条)等私法上の[ ウ ]に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律していることからも明らかであるといわなければならない。したがって、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、[ エ ]の法理の適用があるものと解すべきである。ところで、右法及び条例の規定によれば、事業主体は、公営住宅の入居者を決定するについては入居者を選択する自由を有しないものと解されるが、事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、両者の間には[ エ ]を基礎とする法律関係が存するものというべきであるから、公営住宅の使用者が法の定める公営住宅の明渡請求事由に該当する行為をした場合であっても、賃貸人である事業主体との間の[ エ ]を破壊するとは認め難い特段の事情があるときには、事業主体の長は、当該使用者に対し、その住宅の使用関係を取り消し、その明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。

(最一小判昭和59年12月13日民集38巻12号1411頁〈文章を一部省略した。〉)

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  解答&解説

正解

5
18
12
3

解説

ア:5(社会福祉)、イ:18(公の営造物)、ウ:12(賃貸借関係)、エ:3(信頼関係)

空欄に補充した文章は以下のとおり。

公営住宅法は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を建設し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することにより、国民生活の安定と[ア:社会福祉]の増進に寄与することを目的とするものであって(1条)、この法律によって建設された公営住宅の使用関係については、管理に関する規定を設け、家賃の決定、明渡等について規定し(第3章)、また、法〔=公営住宅法〕の委任(25条)に基づいて制定された条例〔=東京都営住宅条例〕も、使用許可、使用申込、明渡等について具体的な定めをしているところである。右法及び条例の規定によれば、公営住宅の使用関係には、[イ:公の営造物]の利用関係として公法的な一面があることは否定しえないところであって、入居者の募集は公募の方法によるべきこと(法16条)などが定められており、また、特定の者が公営住宅に入居するためには、事業主体の長から使用許可を受けなければならない旨定められているのであるが(条例3条)、他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋[ウ:賃貸借関係]と異なるところはなく、このことは、法が賃貸(1条、2条)等私法上の[ウ:賃貸借関係]に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律していることからも明らかであるといわなければならない。したがって、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、[エ:信頼関係]の法理の適用があるものと解すべきである。ところで、右法及び条例の規定によれば、事業主体は、公営住宅の入居者を決定するについては入居者を選択する自由を有しないものと解されるが、事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、両者の間には[エ:信頼関係]を基礎とする法律関係が存するものというべきであるから、公営住宅の使用者が法の定める公営住宅の明渡請求事由に該当する行為をした場合であっても、賃貸人である事業主体との間の[エ:信頼関係]を破壊するとは認め難い特段の事情があるときには、事業主体の長は、当該使用者に対し、その住宅の使用関係を取り消し、その明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。

(最一小判昭和59年12月13日民集38巻12号1411頁〈文章を一部省略した。〉)


本問は、公法と私法が問題となった判例で、何度も過去問に取り上げられている。

公営住宅の居住者が事業主体に無断で増築(明渡請求事由に該当する行為)をした場合であっても、入居者が使用許可を受けて使用関係が設定された後は、事業主体と居住者には原則として民法及び借家法の適用があり、公営住宅の使用関係にも私人間の信頼関係理論が適用され、賃貸人である事業主体との間の信頼関係を破壊するとはいえない特段の事情があるときは、事業主体の長がした明渡請求は効力を生じないとした。

ア.社会福祉

公営住宅法条文の第1条には、本法の目的が述べられていること、用語の前文「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、・・・」とあること、( )空欄の後に「増進に寄与することを目的とする」と続くことから、社会福祉が類推できる。

イ.公の営造物

公の営造物とは、国又は公共団体により直接に公の目的に供せられる物のことで「公物」とほぼ同じ概念である。国又は公共団体が所有しているといえども全てが公の営造物にあたるわけではなく、公の目的に供せられない物は含まれない。公物と同じ概念であることから不動産に限らず動産も含まれる。

公営住宅とは、地方公共団体が、建設、買取り又は借上げを行い、低額所得者に賃貸し、又は転貸するための住宅及びその附帯施設で、この法律の規定による国の補助に係るものと規定されている(公営住宅法2条2号)。

ウ.賃貸借関係

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる(民法601条)。

エ.信頼関係(理論)

賃貸借では、契約の不履行がある場合、契約を解除することが認められる。しかし、不動産の賃貸借は、信頼関係を基礎とする継続的契約であるため、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたと認められない特段の事情がある場合は、解除を認めないという理論である。

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