平成27年-問14改題 行政法 行政不服審査法
Lv3
問題 更新:2023-01-30 18:46:42
行政不服審査法に基づく審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、または審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する。
- 不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請を認める処分をすべき旨を命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。
- 処分についての審査請求に理由があり、審査庁が裁決で当該処分の変更を命ずることができる場合において、公の利益に著しい障害が生じることを防ぐため必要があると認めるときは、審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる。
- 事実上の行為についての審査請求が理由がある場合、上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨宣言するとともに、当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる。
- 処分についての審査請求の裁決には、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様の事情裁決の制度があるが、事情裁決が行われるのは、処分が違法である場合に限られ、処分が不当である場合には行われない。
正解 4
解説
処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、または審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する。 1.誤り。
処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるときや、その他不適法な審査請求については、審査庁はこれを却下する。却下とは、いわゆる門前払いの判断である。
それに対して、処分についての審査請求が本案審理の結果、当該請求に理由がないと判断された場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を「棄却」することになる(行政不服審査法45条2項)。
却下と棄却の違いをしっかり意識して欲しい。
不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請を認める処分をすべき旨を命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。 2.誤り。
不作為についての審査請求が理由があるときは、審査庁は、不作為庁に対して処分をすべき旨命じるのであって、「申請を認める処分」をすべき旨命じる必要はない(行政不服審査法49条3項)。
処分についての審査請求に理由があり、審査庁が裁決で当該処分の変更を命ずることができる場合において、公の利益に著しい障害が生じることを防ぐため必要があると認めるときは、審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる。 3.誤り。
旧訴願法(行政不服審査法の前身となる法律)の時代には、裁決庁(審査庁)によって処分が不利益に変更される余地があったが、現在の行政不服審査法では、審査庁による不利益変更を禁止している(行政不服審査法48条)。
事実上の行為についての審査請求が理由がある場合、上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨宣言するとともに、当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる。 4.正しい。
事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命じなければならない(行政不服審査法47条)。
審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。
処分についての審査請求の裁決には、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様の事情裁決の制度があるが、事情裁決が行われるのは、処分が違法である場合に限られ、処分が不当である場合には行われない。 5.誤り。
訴訟判決と違い、事情裁決は、処分が不当な場合にも行われることがある。
審査請求に係る処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、処分を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。
この場合には、審査庁は、裁決の主文で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない(行政不服審査法45条3項)。