平成27年-問31改題 民法 債権
Lv4
問題 更新:2024-01-07 12:12:17
代物弁済(担保目的の代物弁済契約によるものは除く。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、土地所有権の移転の効果は、原則として代物弁済契約の意思表示によって生じる。
- 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、債務消滅の効果は、原則として移転登記の完了時に生じる。
- 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が占有する時計を引き渡した場合、当該時計が他人から借りた時計であったとしても、債権者が、善意、無過失で、平穏に、かつ、公然と占有を開始したときには、時計の所有権を取得できる。
- 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する時計を引き渡した場合、その時計が契約の内容に適合しないものであっても、債権者は、債務者に対し担保責任を追及することはできない。
- 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて手形または小切手を交付した場合、これによって債務消滅の効果が生じるので、それらの不渡りがあっても、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできない。
正解 4
解説
債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、土地所有権の移転の効果は、原則として代物弁済契約の意思表示によって生じる。 1.妥当である。
代物弁済の効果のうち「物権関係」を問うている。
代物弁済の効果 | |
---|---|
物権関係 | 目的物が債権者に移転する |
債権関係 | 代物弁済によって債権が消える |
判例は、代物弁済による所有権移転の効果は、原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生ずることを妨げるものではないと解するのが相当であるとしている(最判昭和57年6月4日、民法176条)。
債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、債務消滅の効果は、原則として移転登記の完了時に生じる。 2.妥当である。
代物弁済の効果のうち「債権関係」を問うている。肢1解説の表参照。
判例は、債務者がその負担した給付に代えて不動産所有権の譲渡をもって代物弁済する場合の債務消滅の効力は、原則として単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によって生ずるものと解すべきであるとしている(最判昭和40年4月30日)。
債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が占有する時計を引き渡した場合、当該時計が他人から借りた時計であったとしても、債権者が、善意、無過失で、平穏に、かつ、公然と占有を開始したときには、時計の所有権を取得できる。 3.妥当である。
条文によると、取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得するとされている(民法192条)。
代物弁済契約が「取引行為」にあたるかについて判例は、代物弁済契約も取引行為といえ、民法192条の適用が認められるとしている(大判昭和5年5月10日)。
債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する時計を引き渡した場合、その時計が契約の内容に適合しないものであっても、債権者は、債務者に対し担保責任を追及することはできない。 4.妥当でない。
条文によると、代物弁済契約にも有償契約(売買契約等)の規定が準用される。
ゆえに目的物が契約の内容に適合しない場合には、担保責任を追及することができる(民法559条、民法562条、民法563条、民法564条)。
債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて手形または小切手を交付した場合、これによって債務消滅の効果が生じるので、それらの不渡りがあっても、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできない。 5.妥当である。
代物弁済の効力が認められたら、弁済と同一の効力を有するのだから、債務は消滅し、その後に生じた事象は代物弁済契約の効力に影響はない。