平成28年-問35改題 民法 親族
Lv4
問題 更新:2023-01-30 17:58:25
養子に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 家庭裁判所の審判により後見に付されているAは、認知をするには後見人の同意が必要であるが、養子縁組をするには後見人の同意は必要でない。
- 16歳のBを養子とする場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要であるが、この場合には、Bの法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならない。
- C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。
- F(70歳)およびG(55歳)は夫婦であったところ、子がいないことからFの弟であるH(58歳)を養子とした場合に、この養子縁組の効力は無効である。
- I・J夫婦が、K・L夫婦の子M(15歳)を養子とする旨の縁組をし、その届出が完了した場合、MとK・L夫婦との実親子関係は終了する。
正解 3
解説
家庭裁判所の審判により後見に付されているAは、認知をするには後見人の同意が必要であるが、養子縁組をするには後見人の同意は必要でない。 1.誤り。
認知をするために後見人の同意を必要とする本肢は誤り。
認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない(民法780条)。
認知は親族法上の行為であって、本人の意思がもっとも大切であるため、代理に親しまないのである。
16歳のBを養子とする場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要であるが、この場合には、Bの法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならない。 2.誤り。
16歳のBの養子縁組につき、法定代理人の承諾が必要だとした本肢は誤り。
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(民法798条本文)。
なお、16歳の未成年者が養子になるときに、法定代理人が養子縁組の承諾をしなければならないとする規定はない。
おそらく本問は「16歳」とあることから、代諾縁組を定めた民法797条(養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができるという旨の規定)とのひっかけを狙ったと思われる。
C・Dが夫婦である場合に、Cが、成年者Eを自己のみの養子とするときには、Dが同意について意思を表示することができないときを除いて、Dの同意を得なければならない。 3.正しい。
配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならないが、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない(民法796条)。
配偶者の同意が必要なのは、養子縁組によって、配偶者の相続権が侵害される場面があるからである。
F(70歳)およびG(55歳)は夫婦であったところ、子がいないことからFの弟であるH(58歳)を養子とした場合に、この養子縁組の効力は無効である。 4.誤り。
年長者を養子とした縁組は「無効」ではなく、「取り消す」ことができるのである(民法803条も参照されたい)。
尊属又は年長者は、これを養子とすることができない(民法793条)。
これに違反した縁組は、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる(民法805条)。
I・J夫婦が、K・L夫婦の子M(15歳)を養子とする旨の縁組をし、その届出が完了した場合、MとK・L夫婦との実親子関係は終了する。 5.誤り。
普通養子縁組で実親子関係が終了するとした本肢は誤り。
本肢の養子縁組は普通養子縁組である。
実親子関係を終了させる養子縁組は「特別養子縁組」である(民法817条の2以下)。
特別養子縁組は、原則として養子となる者が特別養子縁組の請求時において15歳に達していたらすることができない(民法817条の5)。
なお、2020年民法改正により特別養子縁組に関して変更されている点に注意。