令和2年-問36 商法 商行為
Lv3
問題 更新:2023-11-20 15:50:18
運送品が高価品である場合における運送人の責任に関する特則について述べた次のア~オの記述のうち、商法の規定および判例に照らし、誤っているものの組合せはどれか。
ア.商法にいう「高価品」とは、単に高価な物品を意味するのではなく、運送人が荷送人から収受する運送賃に照らして、著しく高価なものをいう。
イ.運送品が高価品であるときは、荷送人が運送を委託するにあたりその種類および価額を通知した場合を除き、運送人は運送品に関する損害賠償責任を負わない。
ウ.荷送人が種類および価額の通知をしないときであっても、運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたときは、運送人は免責されない。
エ.運送人の故意によって高価品に損害が生じた場合には運送人は免責されないが、運送人の重大な過失によって高価品に損害が生じたときは免責される。
オ.高価品について運送人が免責されるときは、運送人の不法行為による損害賠償責任も同様に免除される。
- ア・イ
- ア・エ
- イ・ウ
- ウ・オ
- エ・オ
正解 2
解説
ア、エが誤り。
商法にいう「高価品」とは、単に高価な物品を意味するのではなく、運送人が荷送人から収受する運送賃に照らして、著しく高価なものをいう。 ア.誤り
判例によると「高価品」とは、容積または重量の割に著しく高価な物品をいい、一見して高価なものはここでいう高価品にあたらないという。
「商法578条所定の高価品とは、容積または重量の割に著しく高価な物品をいうものと解すべきところ、原審の確定する事実によれば、本件研磨機は容積重量ともに相当巨大であって、その高価なことも一見明瞭な品種であるというのであるから、本件研磨機は同条所定の高価品にはあたらないというべきである。」(最判昭和45年4月21日)
運送品が高価品であるときは、荷送人が運送を委託するにあたりその種類および価額を通知した場合を除き、運送人は運送品に関する損害賠償責任を負わない。 イ.正しい
貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するにあたり、その種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない(商法577条1項)。
荷送人が種類および価額の通知をしないときであっても、運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたときは、運送人は免責されない。 ウ.正しい
貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するにあたりその種類及び価額を通知しなくても、物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたときは、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負う(商法577条2項1号)。
運送人の故意によって高価品に損害が生じた場合には運送人は免責されないが、運送人の重大な過失によって高価品に損害が生じたときは免責される。 エ.誤り
問題文のケースでは、故意であっても重大な過失によってもどちらも免責されない。
貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するにあたりその種類及び価額を通知しなくても、次の場合は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負う(商法577条2項1号、2号)。
①物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。
②運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。
高価品について運送人が免責されるときは、運送人の不法行為による損害賠償責任も同様に免除される。 オ.正しい
高価品について運送人が免責されるときというのは、高価品についての通知がない場合である(商法577条1項)。
そして運送人が高価品について悪意で、故意または重大な過失がある場合は免責されない(商法577条2項1号、2号)。
不法行為責任は故意または過失によるので、商法577条に照らせば高価品について運送人が免責されるときは、不法行為責任も免除される。