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令和5年-問28 民法 総則

Lv2

問題 更新:2024-01-07 21:12:43

Aが所有する甲土地(以下「甲」という。)につき、Bの所有権の取得時効が完成し、その後、Bがこれを援用した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。
  2. Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。
  3. Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。
  4. Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。
  5. Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。
  解答&解説

正解 2

解説

Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができる。 1.妥当である

不動産を時効により取得した占有者と、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者との関係は、時効完成時においては当事者同士と考えられている。
そのため、不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなくても時効取得をもって対抗することができる(大判大正7年3月2日、最判昭和41年11月22日)。

Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときでも、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。 2.妥当でない

Dに背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときは、Bは登記なくして所有権取得を対抗できる。

不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ対抗することができない(最判昭和33年8月28日)。

しかし、当該不動産の譲渡を受け所有権移転登記した者が背信的悪意者にあたると認められる特段の事情がある場合は、登記なくして時効による所有権取得を対抗できる(最判平成18年1月17日)。

Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、その後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、Eに対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗することができる。 3.妥当である

不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ対抗することができない(最判昭和33年8月28日)。
しかし、取得時効後に譲渡を受けた第三者が登記を備え、時効取得者が所有権の取得を対抗できなくなっても、第三者が登記を備えた日からさらに取得時効に必要な期間占有を継続し時効完成した場合には、元の第三者は当事者となっているから、登記なくして時効取得を対抗することができる(最判昭和36年7月20日、最判昭和35年7月27日)。

Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していたなどの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。 4.妥当である

占有者Bが抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、Fの抵当権は消滅する。

不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは、占有者が抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、不動産を時効取得し、その結果、抵当権は消滅する(最判平成24年3月16日)。

Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、Bは、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはできず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許されない。 5.妥当である

時効完成後に譲渡され現れた第三者に対しては、占有者は、登記なくして対抗できない(最判昭和33年8月28日)。
また、取得時効完成の時期は、時効の基礎たる事実の開始した時を起算点として決定すべきであり、取得時効を援用する者が任意に起算点を選択して時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることは許されない(最判昭和35年7月27日)。

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