令和5年-問30 民法 債権
Lv2
問題 更新:2024-01-08 00:08:18
連帯債務者の一人について生じた次のア~オの事由のうち、民法の規定に照らし、他の連帯債務者に対して効力が生じないものの組合せとして、正しいものはどれか。
ア.連帯債務者の一人と債権者との間の混同
イ.連帯債務者の一人がした代物弁済
ウ.連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用
エ.債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求
オ.債権者がした連帯債務者の一人に対する債務の免除
- ア・イ
- ア・ウ
- イ・エ
- ウ・オ
- エ・オ
正解 5
解説
他の連帯債務者に対して効力が生じないものは、エ、オである。
連帯債務の相対効(相対的効力)・絶対効(絶対的効力)を問うている。
相対効 | 連帯債務者の一人に生じた事由が、他の連帯債務者に影響を及ぼさない |
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絶対効 | 連帯債務者の一人に生じた事由が、他の連帯債務者に影響を及ぼす |
他の連帯債務者に影響を及ぼさない、影響を及ぼすというのは、他の連帯債務者に対して効力が生じないか、生じるかという意味である。
連帯債務者は、債権者に対してはそれぞれが全額の債務を負うという点に関して、各連帯債務者は対等な関係であり、それぞれの債務は別のものととらえることができる。
相対的効力の原則 民法441条 |
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民法438条(連帯債務者の一人との間の更改)、民法439条1項(連帯債務者の一人による相殺等)及び民法440条(連帯債務者の一人との間の混同)に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。 ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。 |
連帯債務関係においては「相対効」が原則であるものの、一部「絶対効」も認められる。絶対効は、「弁済(代物弁済、供託、提供、受領遅滞)」「更改」「相殺」「混同」である。
連帯債務者の一人と債権者との間の混同 ア.他の連帯債務者に対して効力が生じる
連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす(民法440条)。
一部の連帯債務者によって弁済がされれば、その限度で債務が消滅する。連帯債務が同一の給付を目的としており、弁済は債権の満足をもたらすから、絶対効であり、他の連帯債務者に対して効力が生じる。
連帯債務者の一人がした代物弁済 イ.他の連帯債務者に対して効力が生じる
弁済者が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する(民法482条)。
一部の連帯債務者によって代物弁済がされれば、その限度で債務が消滅する。連帯債務が同一の給付を目的としており、代物弁済は債権の満足をもたらすから、絶対効であり、他の連帯債務者に対して効力が生じる。
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用 ウ.他の連帯債務者に対して効力が生じる
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する(民法439条1項)。
相殺は絶対効であり、他の連帯債務者に対して効力が生じることになる。
なお、債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる(民法439条2項)。
債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求 エ.他の連帯債務者に対して効力が生じない
履行の請求は原則どおり相対効であり、他の連帯債務者に対して効力が生じない。
履行の請求を受けていない連帯債務者にとっては、みずからの知らない間に履行遅滞に陥っていたり、消滅時効の完成猶予や更新がされるなど不利益が大きいからである。
債権者がした連帯債務者の一人に対する債務の免除 オ.他の連帯債務者に対して効力が生じない
債務の免除は原則どおり相対効であり、他の連帯債務者に対して効力が生じない。
債権者が連帯債務者の一人に対して債務の免除をする場合には、債権者は単にその連帯債務者に対して請求しないという意思を有しているにすぎず、他の連帯債務者に対してまで債務の免除をするという意思を有していないからである。