令和5年-問31 民法 債権
Lv2
問題 更新:2024-01-07 21:15:12
相殺に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであれば、その第三債務者が、差押え後に他人の債権を取得したときでなければ、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
- 時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状にあった場合には、その債権者は、当該債権を自働債権として相殺することができる。
- 相殺禁止特約のついた債権を譲り受けた者が当該特約について悪意又は重過失である場合には、当該譲渡債権の債務者は、当該特約を譲受人に対抗することができる。
- 債務者に対する貸金債権の回収が困難なため、債権者がその腹いせに悪意で債務者の物を破損した場合には、債権者は、当該行為による損害賠償債務を受働債権として自己が有する貸金債権と相殺することはできない。
- 過失によって人の生命又は身体に損害を与えた場合、その加害者は、その被害者に対して有する貸金債権を自働債権として、被害者に対する損害賠償債務と相殺することができる。
正解 5
解説
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであれば、その第三債務者が、差押え後に他人の債権を取得したときでなければ、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。 1.正しい
差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない(民法511条1項、2項)。
時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状にあった場合には、その債権者は、当該債権を自働債権として相殺することができる。 2.正しい
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる(民法508条)。
相殺禁止特約のついた債権を譲り受けた者が当該特約について悪意又は重過失である場合には、当該譲渡債権の債務者は、当該特約を譲受人に対抗することができる。 3.正しい
当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる(民法505条2項)。
債務者に対する貸金債権の回収が困難なため、債権者がその腹いせに悪意で債務者の物を破損した場合には、債権者は、当該行為による損害賠償債務を受働債権として自己が有する貸金債権と相殺することはできない。 4.正しい
悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない(民法509条1号)。
貸金債権の債権者がその腹いせに悪意で債務者の物を破損した場合、当該債権者は悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務を負う債務者となる。
したがって、貸金債権の債権者は、不法行為に基づく損害賠償債務を受動債権として、不法行為に基づく損害賠償の債権者でもある貸金債権の債務者に対して自己が有する貸金債権と相殺することはできない。
過失によって人の生命又は身体に損害を与えた場合、その加害者は、その被害者に対して有する貸金債権を自働債権として、被害者に対する損害賠償債務と相殺することができる。 5.誤り
過失によって人の生命又は身体に損害を与えた場合であっても、被害者に対して有する貸金債権を自働債権として損害賠償債務と相殺することはできない。
人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない(民法509条2号)。