令和5年-問44 記述式 行政法
Lv4
問題 更新:2024-01-07 21:23:48
Y市議会の議員であるXは、2023年7月に開催されたY市議会の委員会において発言(以下「当該発言」という。)を行った。これに対して、当該発言は議会の品位を汚すものであり、Y市議会会議規則α条に違反するとして、Y市議会の懲罰委員会は、20日間の出席停止の懲罰を科すことが相当であるとの決定を行った。Y市議会の議員に対する懲罰は、本会議で議決することによって正式に決定されるところ、本会議の議決は、9月に招集される次の会期の冒頭で行うこととし、会期は終了した。これに対し、Xは、①問題となった当該発言は市政に関係する正当なものであり、議会の品位を汚すものではなく、会議規則には違反しない、②予定されている出席停止の懲罰は20日と期間が長く、これが科されると議員としての職責を果たすことができない、と考えている。
9月招集予定の次の会期までの間において、Xは、出席停止の懲罰を回避するための手段(仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る。)を検討している。次の会期の議会が招集されるまで1ヵ月程度の短い期間しかないことを考慮に入れたとき、誰に対してどのような手段をとることが有効適切か、40字程度で記述しなさい。
(参照条文)
地方自治法
134条
①普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。
②懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない。
135条
①懲罰は、左の通りとする。
一 公開の議場における戒告
二 公開の議場における陳謝
三 一定期間の出席停止
四 除名
②以下略
Y市議会会議規則
α条 議員は、議会の品位を重んじなければならない。
正解例 Y市を被告として、出席停止処分の差止訴訟を提起するとともに、仮の差止めを申し立てる。(42字)
解説
問題文において、「仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る」とされているので、行政訴訟の類型のうち主観訴訟の中の抗告訴訟の一つである「差止訴訟」の提起が必要であることと、仮の救済手段として仮の差止めの申立てについても同時に必要であることを理解し、被告が誰になるかも含めて記述することとなる。
差止訴訟については「訴え」「提起」を選び、仮の差止めについては「申立て」という文言を選んで、被告や処分の内容も含めて記述すると、文字数も含めると少しまとめるのが難しいかもしれない。
どのような手段
目的が「出席停止処分」がなされることを防止したいということであり、緊急性が高いため、「差止訴訟の提起」だけでなく、「仮の差止め」を同時に提起する。
仮の義務付け及び仮の差止めについては、処分の執行停止と同様の機能を有するため、執行停止の規定の多くを準用しており、また、準用してない部分についてもその趣旨自体は類似した規定となっている(行政事件訴訟法37条の5第2項)。
誰に対して
取消訴訟の被告適格規定は取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用されるので、被告はY市である。
処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない(行政事件訴訟法11条1項)。
差止め訴訟でも行政事件訴訟法11条1項が準用されている(行政事件訴訟法38条1項)。