令和5年-問45 記述式 民法
Lv3
問題 更新:2024-01-07 21:24:46
AがBに対して有する貸金債権の担保として、Bが所有する甲建物(以下「甲」という。)につき抵当権が設定され、設定登記が経由された。当該貸金債権につきBが債務不履行に陥った後、甲が火災によって焼失し、Bの保険会社Cに対する火災保険金債権が発生した。Aがこの保険金に対して優先弁済権を行使するためには、民法の規定および判例に照らし、どのような法的手段によって何をしなければならないか。40字程度で記述しなさい。
正解例 抵当権の物上代位権によって、Bへの火災保険金支払い前に債権を差し押さえなければならない。(44字)
解説
抵当権では、その性質の一つとして物上代位性があり、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法372条、民法304条1項ただし書き)。
そもそも抵当目的物である建物が消失したことから、不動産そのものの抵当権による優先弁済権は行使することができなくなる。ただし、もともとの不動産の価値の代わりとして保険金の請求権が生じたと考えることができる。それにより、物上代位によって火災保険金請求権に基づいて優先して弁済を受けることができるが、そのためにはこの保険金債権に関して差し押さえが必要である。
なお、似たような用語に「債権者代位権」があるが、無資力等の要件から考えても今回の問題の意図とは異なるうえに優先弁済権という意味からも適切な法的手段にあたらないため適切ではない。
条件によっては相殺その他の手段も考えられるが、あくまで実質的に弁済を受けることができるだけで「優先弁済権の行使」ではないため、回答として適切であるとはいえない。
したがって、本問題の条件であれば、「物上代位」「Bへの支払い前」「債権を差し押さえる」の3点をキーワードとして記述することとなる。