平成27年-問8 行政法 行政総論
Lv3
問題 更新:2023-01-30 18:38:18
裁判による行政上の義務履行確保について、最高裁判所の判決に照らし、妥当な記述はどれか。
- 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、法令の適用により終局的に解決することができないから、法律上の争訟に該当しない。
- 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、このような訴訟を提起することを認める特別の規定が法律にあれば、適法となりうる。
- 国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、終局的には、公益を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟には該当しない。
- 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、行政上の義務履行確保の一般法である行政代執行法による代執行が認められる場合に限り、不適法である。
- 国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではないが、現行法上、こうした訴訟を認める特別の規定があるため、提起することが許されている。
正解 2
解説
宝塚市パチンコ条例事件(最判平成14年7月9日)を題材にしている。
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、法令の適用により終局的に解決することができないから、法律上の争訟に該当しない。 1.妥当でない。
「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は」、「法律上の争訟に該当しない」という点は正しいが、このような訴訟は、「法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象」とならないというのが本判決の理由付けであり、終局的に解決することができないからではない。
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、このような訴訟を提起することを認める特別の規定が法律にあれば、適法となりうる。 2.妥当である。
判例は「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される(最判平成14年7月9日)」としている。
国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、終局的には、公益を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟には該当しない。 3.妥当でない。
判例は「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として」ではなく、「財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟」については、法律上の争訟と認める、としている。
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟は、行政上の義務履行確保の一般法である行政代執行法による代執行が認められる場合に限り、不適法である。 4.妥当でない。
判例は「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される(最判平成14年7月9日)」としている。
国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではないが、現行法上、こうした訴訟を認める特別の規定があるため、提起することが許されている。 5.妥当でない。
「国又は地方公共団体が財産権の主体として国民に対して義務履行を求める訴訟は、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるわけではない」とはしていない。
判例は「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟にあたるというべきである(最判平成14年7月9日)」としている。