平成27年-問17 行政法 行政事件訴訟法
Lv4
問題 更新:2023-01-30 18:49:04
行政事件訴訟法の定める執行停止に関する次の記述のうち、妥当な記述はどれか。
- 処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。
- 処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。
- 本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。
- 処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。
- 処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。
正解 5
解説
処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。 1.妥当でない。
差止め訴訟は、処分がなされる前に、これからなされる処分を差し止めようとする事前の訴訟である。
したがって、執行停止の対象となる処分がなされていない以上、執行停止の申立てをすることはできない。
また、差止め訴訟に、執行停止の規定が準用されていないことからも明らかである(行政事件訴訟法38条1項、25条)。
処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。 2.妥当でない。
本案訴訟の提起と同時に申し立てなければならないわけではない。
本案訴訟(取消訴訟等)の提起前に執行停止の申立てをすることはできないが、訴訟提起後に執行停止の申立てをすることはできる(行政事件訴訟法25条2項本文)。
本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。 3.妥当でない。
訴訟における執行停止は、原告が申立てる必要がある(行政事件訴訟法25条2項本文)。
それに対して、行政不服審査法に基づく行政不服申立てにおいては、審査庁が職権で執行停止をすることもできる。
処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。 4.妥当でない。
処分の「執行」の停止についてこのような制限はない。
なお、処分の「効力」の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない(行政事件訴訟法25条2項ただし書き)。
処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。 5.妥当である。
処分の執行停止に関する決定は、口頭弁論を経ないですることができる(行政事件訴訟25条6項)。
ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。