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平成26年-問29改題 民法 物権

Lv3

問題 更新:2023-01-30 21:24:50

A、BおよびCは費用を出し合って、別荘地である甲土地および同地上に建造された乙建物を購入し、持分割合を均等として共有名義での所有権移転登記を行った。この場合に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.甲土地および乙建物にかかる管理費用について、AおよびBはそれぞれの負担部分を支払ったが、資産状況が悪化したCはその負担に応じないため、AおよびBが折半してCの負担部分を支払った。この場合、Cが負担に応ずべき時から1年以内に負担に応じない場合には、AおよびBは、相当の償金を支払ってCの持分を取得することができる。

イ.Cが甲土地および乙建物にかかる自己の持分をDに譲渡し、その旨の登記がなされたが、CD間の譲渡契約は錯誤により取消された。この場合、AおよびBは、自己の持分が害されているわけではないので、単独でDに対してCD間の移転登記の抹消を求めることはできない。

ウ.甲土地に隣接する丙土地について、甲土地からの観望を損ねるような工作物を建造しないことを内容とする地役権が設定され、登記されていた。この場合、Aは、自己の持分については、単独で同地役権を消滅させることができるが、同地役権の全部を消滅させることはできない。

エ.Cには相続人となるべき者はなく、内縁の妻Eと共に生活していたところ、Cが死亡した。この場合、甲土地および乙建物にかかるCの持分は、特別縁故者に当たるEに分与されないことが確定した後でなければ、他の共有者であるAおよびBに帰属しない。

オ.Cの債務を担保するため、A、BおよびCが、各人の甲土地にかかる持分につき、Cの債権者Fのために共同抵当権を設定していたところ、抵当権が実行され、Gが全ての持分を競落した。この場合には、乙建物のために法定地上権が成立する。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. ア・オ
  4. イ・ウ
  5. ウ・エ
  解答&解説

正解 4

解説

甲土地および乙建物にかかる管理費用について、AおよびBはそれぞれの負担部分を支払ったが、資産状況が悪化したCはその負担に応じないため、AおよびBが折半してCの負担部分を支払った。この場合、Cが負担に応ずべき時から1年以内に負担に応じない場合には、AおよびBは、相当の償金を支払ってCの持分を取得することができる。 ア.妥当である。

各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負い(民法253条1項)、共有者が1年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる(民法253条2項)。

Cが甲土地および乙建物にかかる自己の持分をDに譲渡し、その旨の登記がなされたが、CD間の譲渡契約は錯誤により取消された。この場合、AおよびBは、自己の持分が害されているわけではないので、単独でDに対してCD間の移転登記の抹消を求めることはできない。 イ.妥当でない。

各共有者は、保存行為をすることができる(民法252条5項)。

判例は「不動産の共有者の1人は、・・・、不実の持分移転登記がされている場合には、・・・、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる」としている(最判平成15年7月11日)。
これは持分権を直接的には侵害されていない共有者からの請求を可能とする判例である。そもそも共有者は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるところ、本肢の事案については、実体に合致しない登記によって、共有不動産に対する妨害状態が生じているということができる。
ゆえに、この妨害を排除する行為は、保存行為と考えられるのである。

甲土地に隣接する丙土地について、甲土地からの観望を損ねるような工作物を建造しないことを内容とする地役権が設定され、登記されていた。この場合、Aは、自己の持分については、単独で同地役権を消滅させることができるが、同地役権の全部を消滅させることはできない。 ウ.妥当でない。

土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない(民法282条1項)。

地役権には不可分性があり、共有者の一人がその持分について、土地のための地役権を消滅させることはできないのである。

地役権が発生するかどうか、消滅するかどうかの問題が出て分からない場合、「民法は地役権に優しい」で判断するとよい。民法は「土地の相互利用」の制度である地役権について、地役権はなるべく成立するように、そしてなるべく消えないように配慮されている。

たとえば条文では、土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得するとされており(民法284条1項)、なるべく成立しやすい方向であると分かる。
別の条文によると、要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずるとされており(民法292条)、地役権は消えにくい方向であると分かる。
これらは我が国の特に首都圏は人口密集地帯であり、「土地の相互利用」を促していかなければ生活がしにくいからである。

Cには相続人となるべき者はなく、内縁の妻Eと共に生活していたところ、Cが死亡した。この場合、甲土地および乙建物にかかるCの持分は、特別縁故者に当たるEに分与されないことが確定した後でなければ、他の共有者であるAおよびBに帰属しない。 エ.妥当である。

共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する(民法255条)。
また、相続人がいない場合、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者等に、残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる(民法958条の2)。

相続人なき共有者の持分は、民法255条、民法958条の2、どちらが優先適用されるかについて判例は、「共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、民法958条の2の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、当該財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、民法255条により他の共有者に帰属することになると解すべきである」としている(最判平成元年11月24日)。

ところで、この判例は「他人にあげるよりは、内縁の妻(特別縁故者)にあげたいのが人情」と覚えるとよい。
いくら共有とはいえ、本肢のケースでは共有者は赤の他人である。それなら故人の意思を推測すると、内縁の妻にあげたいと思うのではあるまいか。

Cの債務を担保するため、A、BおよびCが、各人の甲土地にかかる持分につき、Cの債権者Fのために共同抵当権を設定していたところ、抵当権が実行され、Gが全ての持分を競落した。この場合には、乙建物のために法定地上権が成立する。 オ.妥当である。

成立要件は

①抵当権設定当時に建物が存在していた
②抵当権設定当時、土地と建物が同一の所有者に帰属していた
③土地と建物の一方又は双方に抵当権が設定され、それが抵当権の実行によって、それぞれ別々の所有者に帰属することになった

以上の3つである。

本肢の場合はすべてが満たされるから、法定地上権は成立する(民法388条)。

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